鏡映の織りなす世界

FMS特別講義2025

自己紹介

中村建斗

  • 博士(理学)
  • FMS1期生(2013年4月入学)
  • 学部2年~博士後期(2022年3月)まで阿原研究室に所属
  • 現在はソフトウェアエンジニア
    • ペイントソフトの研究開発(3DCG機能)
    • ウェブアプリケーションの開発

取り組んでいる研究・開発活動分野

フラクタル・幾何学図形の可視化とその高速化

フラクタル図形とは

自己相似構造をもつ図形のこと
図形のある部分を拡大していくと無限にその構造が現れる


シェルピンスキーのギャスケット


コッホ曲線

自然界のフラクタル


ロマネスコブロッコリー出典


シダ出典

フラクタル描画ソフトウェアの開発


Kleinian Walker: クライン群の極限集合を描画するソフトウェア

フラクタル描画ソフトウェアの開発


Schottky Link:円の反転によるフラクタルを描画するソフトウェア

三次元フラクタル(Ahara-Araki Fractal)

通称Ahara-Araki Fractalと呼ばれる三次元形状を持つフラクタルの描画ソフトウェア

アニメーション

ポワンカレの迷い鏡


渋谷科学センター・ハチラボにおけるテセレーション展
つくばエキスポセンターにおける企画展で展示

表紙・挿絵


講談社 「複雑系」入門 表紙


Newton別冊:数学の世界
図形編改訂第2版 フラクタル画像

Ahara-Araki Fractalの3Dプリント

Fractal Box

Infinity Fractal Box

モチベーション

フラクタル図形のような複雑怪奇な図形を理解して自由自在に描きたい

そのために

  • ソフトウェアの開発
    • どうやって計算するのか
    • どうやって描画するのか
  • 数学の知識
    • フラクタルができる数学の仕組み・ルール

きっかけはフラクタルアートとの出会い

はじめてのフラクタル


Processingで描画したマンデルブロ集合

その他の有名なフラクタル


シェルピンスキーのギャスケット


コッホ曲線

インドラの真珠との出会い


インドラの真珠: クラインの夢みる世界


円板で構成されるフラクタル

クライン群の極限集合をProcessingで描画

クライン群の極限集合

極限集合ポスター

三次元の極限集合

阿原研の"脳みそ"

Ahara-Araki Fractal

Ahara-Araki Fractal video thumbnail (print)

初めて描いた三次元フラクタル

コンピュータによる計算と描画の問題

  • 右図のフラクタルは大量の球の集合体で形作ることができる
  • 現在のハードウェアでも愚直に球を描いていくのは時間がかかる


阿原先生によって描画された画像
当時1枚10分はかかっていたらしい

コンピュータによる計算と描画の問題

フラクタルは無限に続く構造をもつ
どこまで計算し、どう描くか?

右図では深さnnk=1d43k1\sum_{k=1}^{d}4\cdot3^{k-1}個の円が存在(指数オーダーで増える)
→ 効率的な計算・描画アルゴリズムが必要

解決の糸口は3次元フラクタルアート


Mandelbox rendered by Fractal Lab

リアルタイム3Dフラクタル

Real-time 3D fractal video thumbnail (print)

キーワードは並列計算

通常のアプローチ

  • たくさんの円や球の座標を計算して直接描く

高速に描画するためのアプローチ

  • 画面の点(ピクセル)の色を同時に計算し、点ごとに塗る
    →GPUによる並列計算と相性が良い
  • ただし、制約も多く、対象となる幾何学やアルゴリズムに対する理解が不可欠


円そのものではなく、ある点がどの円板に属しているかを計算する

リアルタイムフラクタル描画アプリケーションへ

幾何学を可視化する方法

可視化に関する2つの課題

  • コンピュータでどうやって描くのか?
    • 計算量と描画の最適化
  • 数学的に理解すべきこと
    • 見方:どの「視点」で捉えるか
      • 例:地図投影(球→平面)、座標系の選択
    • ルール:どんな「条件」で成立するか
      • 例:鏡の角度、対称性、タイル張りの条件
        → これから紹介していきます

これまで紹介した複雑なフラクタル図形の秘密

基本的なパターン+鏡映の繰り返しでできている
→鏡の組み合わせで、無限に複雑な世界が生まれる


基本のパターン


フラクタル


基本のパターン


フラクタル

本日の内容

キーワード:”鏡”と”万華鏡”

  • 鏡によって形作られるパターンの性質を知る
  • 鏡の組み合わせ方のルールを知る
  • 通常の鏡を数学的に拡張し、より複雑な世界を知る
  • それらの性質を意識して実際に模様を作ってみる(課題)

万華鏡

鏡張りの筒の底にオブジェクト(ビーズなど)を封入し、反対側からのぞき込む玩具

鏡映

右の猫の画像を鏡や万華鏡で写していく
鏡映の前後で以下の点に注目しよう

  • 猫の向き
  • 猫の大きさ
  • しっぽや耳の角度

鏡映

鏡を挟んで等距離の位置に映す

  • 鏡映の前後で像が反転する
  • 大きさや角度は保たれる

(p)( \mathbf{p} ) を鏡面を通る点、鏡面の単位法線ベクトル (n)( \mathbf{n} ) とすると、鏡映写像Rp,n(a)\mathrm{R}_{\mathbf{p}, \mathbf{n}}(\mathbf{a})は以下のように表せる

Rp,n(a)=a2((ap)n)n\mathrm{R}_{\mathbf{p}, \mathbf{n}}(\mathbf{a}) = \mathbf{a} - 2\,\bigl((\mathbf{a} - \mathbf{p}) \cdot \mathbf{n}\bigr)\,\mathbf{n}

合わせ鏡

二枚の鏡を平行に向かい合わせて置く
→反転像と正しい向きの像が交互に現れる

向かい合う鏡の鏡映変換RRを合成すると鏡の間の距離ddの二倍の平行移動になる

RLi(a)=a2((api)n)nT(a)=RL2(RL1(a))=a+2dnR_{L_i}(\mathbf{a}) = \mathbf{a} - 2\,\bigl((\mathbf{a} - \mathbf{p}_i) \cdot \mathbf{n}\bigr)\,\mathbf{n}\\\\ T(\mathbf{a}) = R_{L_2}\bigl(R_{L_1}(\mathbf{a})\bigr) = \mathbf{a} + 2d\,\mathbf{n}

交わる鏡

二枚の鏡を交差させて配置
→鏡の外の空間が折りたたまれ、いくつかの空間になるように見える
ただし、鏡が交差する角度によっては綺麗に分割されない

交わる二枚の鏡の鏡映変換を合成すると鏡のなす角度の二倍の回転になる

コンピュータによる実装の制限

プログラムは"順番に"計算する
→ 数学的に成立しない角度では実装の方法で見え方が変わる

成立する角度

ぴったり敷き詰め

中途半端な角度

鏡映の処理順で見え方が変わる

次の実験:どの角度なら"成立"するか探そう

実験:二枚の鏡による像

Hinge demo fallback (print)

実験の見方:綺麗に領域が分割される角度を確認する。像は正/反転が交互に現れる。

交わる鏡による平面の分割

鏡のなす角をπn\frac{\pi}{n}とするとき、2n2n個の空間に等分される(nは自然数)
πn\frac{\pi}{n}以外の角度の場合、等分されず、重なりが生まれる


なす角π2\frac{\pi}{2}のとき、4個の空間


πn\frac{\pi}{n}でないとき、空間は等分されず、図に重なりが生まれる

鏡映とタイル張り

万華鏡の鏡映像 = 平面のタイル張り

鏡で囲まれた領域(基本領域)が鏡映で繰り返され、平面全体を埋め尽くす

  • 隙間も重なりもなく平面を覆うことをタイル張り(テセレーション) という
  • 綺麗な万華鏡の条件 = タイル張りができる条件

三枚の鏡で万華鏡を作る

二枚の鏡の角度はπn\frac{\pi}{n}にならないとタイル張りできなかった
では三角形の場合は?

三角形の場合の条件

三角形の角度をそれぞれπp,πq,πr\frac{\pi}{p}, \frac{\pi}{q}, \frac{\pi}{r}とする。このとき、三角形の内角の和の条件を満たす(p,q,r)(p, q, r)の組み合わせは3つしかない

  • (3,3,3)(3, 3, 3) - 正三角形
  • (2,4,4)(2, 4, 4) - 直角二等辺三角形
  • (2,3,6)(2, 3, 6) - 90 - 60 - 30の直角三角形

実験:綺麗な鏡映像を得られる条件

Triangle kaleidoscope fallback (print)

実験の見方:(3, 3, 3)(2, 4, 4,)(2, 3, 6)の場合敷き詰められる(他は敷き詰められない)。

さらに鏡の枚数を増やす

鏡の枚数を四枚以上にしたときはどうなる?

  • 4枚
  • 5枚
  • 6枚
  • 7枚
  • 8枚
  • ......

実験:さらに鏡の枚数を増やす

Regular square tiling fallback (print)

実験の見方:鏡の枚数を増やし、正n角形で像がピッタリ敷き詰めらるか確認する

まとめ

ピッタリとずれのない鏡映像を得るためには以下の条件を満たす必要がある

鏡同士のなす角をπn\frac{\pi}{n}とすると

  • 鏡が3枚のとき
    • (3, 3, 3)、(2, 4, 4)、(2, 3, 6)
  • 鏡が4枚のとき
    • (2, 2, 2, 2)
  • 鏡が5枚以上のとき
    • 存在しない

鏡映を用いた繰り返し模様 (3,3,3)

鏡映を用いた繰り返し模様 (3,3,3)

鏡映を用いた繰り返し模様 (2, 4, 4)

鏡映を用いた繰り返し模様 (2, 4, 4)

鏡映を用いた繰り返し模様 (2, 3, 6)

鏡映を用いた繰り返し模様 (2, 3, 6)

合同変換 - 鏡映変換の組み合わせで作る変換

平面上で図形の形や大きさを変えない変換

  • 鏡映
    等長変換の“原子”。合成することで他の基本操作が作れる。

  • 平行移動(合わせ鏡)
    平行な2直線で挟むと、直線に垂直な向きへ“間隔の2倍”だけ動く。

  • 回転(交わる鏡)
    交わる2直線の交点が回転中心、回転角は“交角の2倍”。

壁紙群 - 合同変換で作る模様

あるタイルの大きさや形を変えずに平面を敷き詰める変換の組み合わせは17種類
それぞれ数字とアルファベットの国際共通表記がついている


p1:平行移動出典


p2:π\pi回転+平行移動出典


p4:π2\frac{\pi}{2}回転+平行移動

壁紙群 - 合同変換で作る模様

鏡映・平行移動・回転の軸を意識してさがしてみよう


p1:平行移動出典


p2:π\pi回転+平行移動出典


p4:π2\frac{\pi}{2}回転+平行移動出典

壁紙群 - 合同変換で作る模様

万華鏡のパターンも壁紙群の仲間
その他の分類→Wallpaper group - wikipedia


(3, 3, 3): p3m1出典


(2, 4, 4): p4m


(2, 3, 6): p6m

壁紙群 - エッシャーによる作品

画家のエッシャーは壁紙群をもとにした作品をいくつも描いている
動物をモチーフにした図柄が特徴的で、エッシャータイリングと呼ばれる

M.C. Escher Collection - Symmetry

まとめ:平面での鏡映とタイル張り

鏡の配置とタイル張りの関係

  • 鏡の角度が πn\frac{\pi}{n} のとき綺麗な鏡映像が得られる(タイル張りできる)
  • 三角形の場合:(3,3,3), (2,4,4), (2,3,6) の3パターンのみ
  • 正多角形の場合:正三角形、正方形のみ(正五角形以上は不可)

鏡映の組み合わせでできる変換 - 合同変換

  • 変換の前後で図形の形も大きさも変わらない(鏡映・平行移動・回転)
  • 同じ形・大きさのタイルでタイル張りできる

次は円の反転による新しい鏡映の世界へ

曲がった鏡

曲がった鏡による鏡映は存在している?

Mirro ball panoramio by Max Nossin

円による鏡映

円に関する鏡変換をみてみよう
※ただし、物理現象とは異なるので注意


円の鏡映によって描かれたフラクタル

おさらい:通常の鏡映の計算方法

  • PPから鏡へ垂線を引く
  • 垂線と鏡の交差点をQQとすると、移された点PP'はQから等距離の位置にある

実験2 円による鏡映を計算してみる

反転の計算

  • 鏡映変換を作用させる点をPP、移された点をPP'とする
  • 点Pから円の中心Oへ直線を引く
  • PP'OPOP=r2OP・OP' = r^2を満たす点に移る

実験2 円の反転(鏡映)を計算してみる

実験2 円の反転 答え

円に関する鏡映の性質

  • 点と点の距離を保たない
  • 角度は保つ
  • 直線は円に、円は直線に入れ替わる
    • 直線は半径が無限大の円
    • 無限遠点は円の中心へ移される
    • →線分は円の中心を通る円弧になる

実験:円に関する鏡映の挙動

Circle inversion fallback (print)

ポイント:直線は円へ、円は直線へ入れ替わる。角度(交わり方)は保たれる。

円の鏡による万華鏡

円弧で囲まれる三角形で万華鏡を描いてみる

  • 直線は半径が無限大の円
  • 二つの角度がπ3,π3\frac{\pi}{3}, \frac{\pi}{3}になるよう、二直線を固定し、残りの辺を円弧にする


画像はミス (3, 3, r)を使用する

実験:円の鏡による万華鏡

Circle inversion kaleidoscope fallback (print)

実験の見方:円の鏡で展開されたタイルは円周へ収束。

円の鏡による万華鏡

  • タイルは円周に収束していく
  • 三角形の内角をそれぞれ(3,3,r)(3, 3, r)としたとき、r>=4r >= 4の整数
    →無限のパターンが存在する
  • r=r = \inftyのとき、角度は0度
    →辺と辺が接する状態


r=r = \inftyの状態 三角形の内角の和は2π3\frac{2\pi}{3}

より詳しく条件を調査する

他の条件の時も調査してみる

  • (2,4,r)(2, 4, r)の場合
  • (2,3,r)(2, 3, r)の場合

実験 円の万華鏡の角度

Multi-mirror conditions fallback (print)

ポイント:直線の鏡の場合と対比してみる

円の三角形タイル張り条件

πp+πq+πr<π\frac{\pi}{p} + \frac{\pi}{q} + \frac{\pi}{r} < \pi

  • ⇔ 内角和 < π の時、ぴったりとタイル張りができる
  • 例) (3,3,7), (2,3,7), (2,4,5)......
  • 組み合わせパターンは無限に存在
  • 模様は円周へ収束する
  • このようなタイル張りを双曲タイリングとよぶ

円板の中のタイル張り = 双曲タイリング

このようなタイル張りを双曲タイリングと呼ぶ

特徴

  • 中心から離れるほど模様が細かくなる
  • 通常の鏡では不可能な正五角形や正七角形の敷き詰めが可能

鏡の枚数を増やす

Multi-mirror conditions fallback (print)

実験の見方:鏡の枚数を増やしても、成立条件を満たす場合のみ敷き詰め可能。

鏡の枚数を増やす


Make Hyperbolic Tiling of Images出典

まとめ:タイル張りの条件

平面でのタイル張り

  • 三角形の内角和 = π
  • タイル張りできるのは3パターン
    • (3,3,3), (2,4,4), (2,3,6)
  • 正多角形は正三角形、正方形のみ

円板の中でのタイル張り

  • 三角形の内角和 < π
  • 綺麗にタイル張りできるパターンは無限に存在
    • (3,3,7), (2,3,7), (2,4,5), (3,4,5)......
  • 正五角形以上も可能
  • 模様は円周へ向かって無限に細かくなる

エッシャーによる作品

M.C. Escher Collection - Mathematics

  • Circle Limit I~IVなどの木版画

2:490px

円の反転フラクタル

この図では自由に円を配置し、その鏡映像を描いている。
→双曲タイリングのように、角度の条件は考慮していない


Schottky Linkで描画したフラクタル

円の鏡映の組み合わせで作る変換

円の反転の組み合わせによって構成される変換はメビウス変換とも呼ばれる

  • 鏡映
    • 円に関する鏡映
    • 直線に関する鏡映
  • 平行移動
  • 回転
  • 拡大縮小
  • ねじれ・うず


この図はメビウス変換によってねじれやうずをみることができる

1p+1q+1r>1\frac{1}{p} + \frac{1}{q} + \frac{1}{r} > 1の世界

Spherical tetrahedron fallback (print)

実験の見方:曲がった鏡(球)では“角度”を保ちつつ構造が球面へ押し寄せる。

四角形型の万華鏡を三次元の直方体に拡張すると鏡映によって直方体は空間を埋めつくす

wk:400px

-->

Ahara-Araki Fractalの作り方

三次元空間で万華鏡を考えて、三次元のタイル張りを行う
右図は立方体の表面をで削った立体
→球に関する鏡映(反転)を考えてタイル張りを行う

球の鏡によるタイル張り

三次元形状なので、万華鏡の最も外側を観察することになる

球の鏡によるタイル張り

三次元形状なので、万華鏡の最も外側を観察することになる

球の鏡によるタイル張り

三次元形状なので、万華鏡の最も外側を観察することになる

球の鏡によるタイル張り

三次元形状なので、万華鏡の最も外側を観察することになる

球の鏡によるタイル張り

三次元形状なので、万華鏡の最も外側を観察することになる

球の鏡によるタイル張り

三次元形状なので、万華鏡の最も外側を観察することになる

球の鏡によるタイル張り

三次元形状なので、万華鏡の最も外側を観察することになる

球の鏡によるタイル張り

三次元形状なので、万華鏡の最も外側を観察することになる

本日のまとめ

コンピュータによる描画

  • フラクタルを描画するときにはどこまで計算し、どう描くか?という問題が常に付きまとう
  • 解決策の一つは並列計算。画面の点ごとに計算し、色を塗る
  • 数学的な仕組みやルールを理解し、アルゴリズムに落とし込む必要がある

本日のまとめ

平面の鏡:身近な法則から万華鏡やタイル模様へ

  • 2枚の鏡:角度π/nで2n2n個の部屋に分割
  • 3枚の鏡:(3,3,3) / (2,4,4) / (2,3,6) の3パターンだけ

円の鏡:無限の世界

  • 内角和<π< \piで無限のパターンが存在

球の鏡:三次元へ

  • 球面では内角和>π> \piの三角形が存在する
  • 球の反転によるAhara-Araki Fractal(三次元フラクタル)

課題 模様・パターンを制作してみる

  • 任意の手段で模様・パターンを作成してください。
  • 作成した模様のアピールポイント、作った感想などを書いてください。
  • その他、わかったこと・わかりにくかったことなどがあれば教えてください。
  • 上記をまとめてpdfで提出してください。

作成手段例

  • 各種アプリ
  • 手書き
  • プログラムを書く
  • AIに書かせる

課題 模様・パターンを制作してみる

ポイント

  • 鏡や軸(鏡映軸・回転軸・平行移動軸)がどこにあるかを意識する
  • モチーフに”見立て”を用いてみる(動植物は定番)
  • もちろん純粋に幾何学的なパターンでもよい

アプリケーションの例

Wallpaper Symmetry

最低限の機能がそろっている

  • 左パネル 17種類の壁紙群を選択
  • 右パネル ペン設定
  • Show Grid 簡易的なグリッド表示
  • p3m1とp31mが入れ替わっているので注意(おそらく勘違い)

iOrnament Pro

iOS端末を持っている場合お勧め

  • 赤丸 グリッド表示
  • 橙丸 ペン設定
  • 黄丸 壁紙群の種類を設定(17種類)

有料機能で双曲タイリング・球面も扱える

AIにプログラムを書かせる

画像生成AIでタイル張りのルールを守って描画させることは難しい
→タイル張りを行うプログラムをAIに書かせる

ツール

  • ChatGPT, Gemini
    WebUI上でアプリの製作が可能
  • codex, Gemini cli, GitHub Copilot

AIにプログラムを書かせる

うまく実装させるコツ
→計画させてから実行させる

  • まずAIに計画を立てさせる
  • 計画をAIに相談しながらブラッシュアップする
    • インタビューしてもらうのも有効
  • 実装を行ってもらう

さらに学ぶなら

時間配分 導入 5分 自己紹介 10分 → ここでコンピュータで鏡をいかにして計算するか?→実際の鏡とおなじ挙動ではないエッセンスを抽出しておこなっている。数学的な鏡と ユークリッド 15分 課題1 10分 (幾何構造の分解) 双曲 20分  → 反転計算ワーク 5~10分 球面 5分 球面体 5分 課題2 10分 (模様づくりなどはメイン フォールバック課題も用意したい) → 手書きはありかも → 現実でも、ネットでもいいので、パターンのある模様を探して、鏡映軸、回転軸、平行移動軸を見つけて書き込んだものを提出してください 質疑 10分 100 バッファ+10分 円弧をもった多角形 正多角形 正方形できるのはわかる 長方形でもできる 角度で辺の長さが違う 正多角形で始める オマケ 正多角形から変形していくと 4よりおおきいものはない。 長方形でもできる *たりてないもの* ワークシート ハイパボリックエッシャーセット お絵描きツール その他の有名なフラクタル 鏡無しのスライドはさしこんでおくとよい 円弧の話 直線が円になる話を差し込んでおく。 反転の性質とデモの順番は入れ替えた方がいいかもしれない。 矩形の色を合わせる 反転円と直線の色は変える 反転で写されたハンドルも描画しておいたほうがよい ハンドルの色を ハンドルの片方の色は変えた方がいい。 まとめスライドがない。 今日話したいこと →今日はこういうことを話しました。 というスライドがほしい。 見ているページ数 デモがはいっていること イントロ 27分 → 35分

タイトルにもあるように本日の内容は鏡映、鏡による作用です。 実は、ここまで紹介した私の研究や活動のベースとなる数学には鏡映があります。 鏡映、その法則性に目を向けてみたことはありますか? 今回の講義の目的の一つは、その法則に目を向けて理解できるようになること。 そして、それらの法則を利用して、自分の手で鏡映を用いたパターンデザインしてもらうことです。 法則性を見抜いたり、それを応用して何かを作ったりする力はきっと役に立つはずです。

今日は“鏡映のルール”を手がかりに、見え方が変わる体験をします。 - 見方:鏡映の“成功のサイン”を先に知る(部屋数/対称の捉え方) - 実験:コンピュータを用いた実験により、鏡映の性質を体験する - 創作:鏡映の組み合わせを用いて模様を捉え、実際に作ってみる

開幕用スピーカーノート(5分) 0:00 タイトル:今日は鏡映の見方・条件・創作まで一気通貫で体験します。 0:20 フック:二枚の鏡で“何個の部屋に分かれるか”を先に想像してみてください。 0:40 アジェンダ:見方→実験→創作。成功のサインを先に言語化します。 1:10 目的:観察・言語化・創作の3つを、各スライドで短く積み上げます。 1:30 期待値:最初の実験は「部屋数=2n」「正逆の像が交互」ここを見ます。 2:00 操作確認:ネット不調でも静止画で説明可、焦らず進行。

万華鏡が出す模様は鏡の配置方法で大きく変わります。 なんとなくきれいだな、幾何学的だな、と思うことがあっても、具体的にどのような法則性があるかまで知っているでしょうか? そこには法則性が隠れていそうです。 その法則を解き明かしていきましょう 鏡、というと理科、物理の授業で扱うことが多かったかと思いますが、数学でも鏡映の性質は大きな役割を持っています。

鏡映の性質をおさらいしておきましょう。 鏡によって反射された像が目に入る図、これを見たことがあるかと思います。 入射角と反射角が等しく光が反射され、目に入る。 虚像の位置に物体が写って見えるのでした。 数学では鏡を対称軸にして、物体を等距離の位置に移す操作を鏡映変換と呼びます。 万華鏡では三枚の鏡を向かい合わせていますが、まずは二枚の鏡によってどのような 性質が現れるかを見てみましょう

複数枚の鏡を組み合わせることで。無限に像が移るという現象を観察したことがあると思います。その像をよく観察したことはありますか? 反射が繰り返されるので、その像は向きの順序が交互に現れることに注目してください。

w:400px はMarpのキーワードで画像の幅を指定

二枚の鏡を使ってみましょう。 こちらに鏡を用意しました。 ヒンジでつながっており、角度をつけて像を見ることができるようにしています。 鏡と鏡のなす角に注目して、その像を見てみましょう。

w:400px はMarpのキーワードで画像の幅を指定

映る像と鏡にはどのような関係性があるかわかるでしょうか? 鏡と鏡の間の空間が折りたたまれていることがわかるかと思います。 実験の見方:部屋数は 2n。像は正/反転が交互に現れる。 これを理想化したコンピュータのページを用意しました。 何枚の空間に折りたたまれるでしょうか? 中途半端な像が現れますが、ところどころ、きっちり部屋が分割されるようになります。 これはどのような時でしょうか?

全体で2PIになるかどうかをかんがえるとわかるはず 空間がきっちり分割されるときと中途半端に分割されるときが観察されます。 それでは、きっちりと分割されるときがどのような時になるか観察してみてください。 二枚の鏡がなす角をPI/n(1 < nの整数)とするとき、n個の空間に分割されます ではnが無限でも…?nが1万とかになるとどうなのでしょうか? PI/はどうでしょうか?1個の空間になるはずですが、

これでみたように、鏡の像をピッタリと作るには、角度に条件があることがわかりました。 となると、万華鏡の鏡の配置にも条件が必要だと思います。。

これでみたように、鏡の像をピッタリと作るには、角度に条件があることがわかりました。 となると、万華鏡の鏡の配置にも条件が必要だと思います。。

実際に(3, 3, 3), (2, 4, 4), (2, 3, 6)のパターンを試してみる。 これ以外のパターンはどうやっても綺麗なタイル張りにならない

それでは4本以上の場合についてみてみましょう。 先ほどと同様にデモを用意しています。 左のボタンで鏡の枚数を調整しピッタリ鏡張りできる条件を探してみましょう。

1/p + 1 / q + 1/ r = 1から導ける 鏡が4枚の時 すべての頂点の角度は2 / piです 鏡が6枚の時、正六角形を敷き詰めることができますが、各頂点で3回回転するので、左右非対称な図形はずれが生じます

万華鏡の仕組み、鏡でピッタリ敷き詰めるパターンをみてきました。 現実世界にも、この鏡張りの仕組みを用いて作られたパターンというのはいくつもあります。 いくつか紹介しましょう。 三枚の鏡、四枚の鏡の例を画像で列挙する | 三角形(万華鏡) | Conway(オービフォールド) | 壁紙群(国際記号) | 代表タイル | | ----------------- | ---------------- | --------- | --------------------------------------------- | | (3,3,3)(正三角形) | ***333** | **p3m1** | 正三角形(蜂の巣格子)に沿う鏡映配置。([ウィキペディア][1]) | | (2,4,4)(直角二等辺) | ***442** | **p4m** | 正方格子の鏡映をもつパターン。([ウィキペディア][2]) | | (2,3,6)(30–60–90) | ***632** | **p6m** | 六角格子(正三角形/正六角形タイル)に最大の鏡映対称。([xahlee.info][3]) | [1]: https://en.wikipedia.org/wiki/Orbifold_notation?utm_source=chatgpt.com "Orbifold notation" [2]: https://en.wikipedia.org/wiki/Wallpaper_group?utm_source=chatgpt.com "Wallpaper group" [3]: https://xahlee.info/Wallpaper_dir/c5_17WallpaperGroups.html?utm_source=chatgpt.com "5.A The 17 Wallpaper Groups"

ここまで、単純に鏡映で映すことでできる模様をみてきました。 実は、鏡映変換というのは、プリミティブな変換です。 鏡映変換を組み合わせることによって、平行移動や回転といった渡したになじみの深い操作を構成することができます。これらを合同変換と呼びます(距離を保つ変換) 【流れ(60–90秒)】 1) 合同変換=距離を保つ変換の基本は「鏡映」。平面の等長変換は鏡映の合成で表せる。 2) 平行移動:平行な2枚の合わせ鏡。2直線の間隔の“2倍”だけ、法線方向に進む。 3) 回転:交わる2枚の鏡。2直線のなす角の“2倍”だけ、交点を中心に回る。 4) 滑り鏡映:鏡映と、鏡線に沿う移動の合成。壁紙模様で多用。 ※ 合成の順序は一般に可換でない。

- **滑り鏡映** これは合同変換の項目にいれると誤解を生む可能性がある ある直線への鏡映と、その直線に沿う移動の合成。模様生成で頻出。

現実世界にはもっと色々な鏡があると思います。 たとえば、曲がった鏡はどうでしょうか? ステンレスのボウルや、クリスマスオーナメントなど、反射する球状の物体を目にすることはあると思います。これらを考えてみましょう。 曲がった鏡の例ボウルやクリスマスオーナメントの画像を貼る

これで数学的に定義された円に関する鏡映変換を手に入れることができました。 では軽く計算して、円の反転によって図がどのように映るのか試してみましょう。 配布済みの紙に描かれた図を中心の円に関して反転させてみましょう。 そして、反転前と反転後の図形を観察してみてください。 点と点の距離や角度に注目してみるのがよいでしょう。 (角度の観察しやすい五角形、簡単な直線)

ここまで見てきたように、円の反転が絡んだ図を手で計算して描くことは非常に大変です。コンピュータによる計算は非常に効果的です。コンピュータによってみることのできるようになった図というのは色々あります。また、それをモチーフにした芸術作品というのも色々でてくるようになりました。 タイル張り以外でいうとフラクタル図形など

壁紙群の操作はすべて直線鏡映を合成して得ることができます。 円反転も同じようなことができます。ただし、円反転は等角写像であり、ユークリッド距離を壊してしまうので通常の意味での対称性は壊れます。 しかし、角度は保たれるので、”交わり方”は保存されます。

(タイルを展開させていく図を見せる) なんとこれらのタイルは無限に広がるのではなく、円周上に収束していくことがわかります。この端の方がどうなっていくかというと、どこまで拡大してもタイルが続いていくことをみることができます。 これはまさにコンピュータだからこそできる図です。 これまで、世界は平面上でどこまでも続いていたのですが、 世界が円盤になりまりました。 この円盤の世界をこれから双曲幾何学の世界とよびましょう。 この図は双曲タイリングと呼ばれています。 ところで、円の場合も直線の万華鏡の場合と角度は同じなのでしょうか? 実は、(3, 3, 3), (2, 3, 6), (2, 4, 4) では正しくタイル張りすることができません。 もし「三本の円」を自由に取り、うち一つ以上が測地線でない(境界に直交しない=ハイパーサイクル等)なら、曲線三辺で囲まれた閉領域を描くこと自体は可能です。ただしそれは双曲三角形ではないし、三鏡の反射群による標準的なタイル理論の対象にもなりません。円板モデルで測地線は「境界に直交する円弧/直径」に限られるためです。 これは意図的にぼかす?schottky linkでは円はどこでもおけるのでハイパーサイクルになる

では、今回も実験してみましょう。 円の三角形は暑かったことがないと思います。 今回は二つの角度を固定しています。 のこり一つの角度だけが動くように固定しているので、 角度を調整して、綺麗にタイル張りできる部分があるか探してみてください。 3, 3, 4の時、(3, 3, 5), (3, 3, 6) ... ところで、お気づきでしょうか? 先ほどから、三角形と呼んでいる図形の内角の和は180ではないのです。

こうした模様を描いた画家にM.C.エッシャーがいます。エッシャーのだまし絵で有名な画家です。驚くべきことにこの図は手で制作されています。 どのタイルを変形したモチーフとそれを反転したモチーフでうまくタイル張りされています。 こうした数学の概念をアートに落とし込んだ有名な作家のひとりにエッシャーがいます。 エッシャーといえばだまし絵のイメージですが、今日お話ししたような、幾何学を用いた作品を多く描いています

先ほど、鏡映変換の組み合わせで、平行移動や回転といった基本的な操作を合成できると書きましたが、円に関する鏡映変換も同じようにいくつかの鏡映を合成することによって、 平行移動、回転、を作ることができます。 これは双曲幾何学における合同変換です。 つまりは、双曲幾何学においても、プリミティブな操作として鏡映変換が現れるということですね。

さて、ここまでが三角形内閣の和がキーとなる世界を見てきました。 私たちになじみの深い内角の和がPIの世界 円盤に囲まれた、三角形の内角の和がPIより小さくなる世界 じゃあPIより大きい世界というのはあるのでしょうか? あります しかし、これは平面上では実現することはできません。 ではどうすれば見れるか、というと、球面です。 球の上では三角形の面積の和がPIより大きくなるという現象が起こります。

## 三次元空間の万華鏡 <!-- ここまで、二次元の図を扱ってきましたが、三次元のタイル張りを考えてみましょう。 たとえば、四枚の鏡で囲まれたものを考えて、これを三次元にしてみます。 しかし、万華鏡の領域は空間すべてに広がってしまい、私たちは外から観察することができません。 (立方体が鏡映変換で空間全体を埋め尽くす図) 骨組み、辺だけを描画する方法もありますが、

ここまでくると一番最初に出したAhara Araki Fractalの仕組みがわかります。最初に出したこの立体はその表面を球で削られている →円の鏡映を三次元に拡張して球に関する鏡映を考えよう